正直に言います。「子どもの問題」とされていることの多くは、実は「引き継ぎの問題」かもしれません。
「保育園の頃は元気に通えていたのに、小学校に入ってから急に様子が変わった」「小学校では平気だったのに、中学に入って不登校気味になった」——こうした声を、PTA活動の中で何度も聞いてきました。
こうした変化は「子どもの性格の問題」「しつけの問題」として片付けられがちです。でも本当にそうなのでしょうか。この記事では、「小1プロブレム」「中1ギャップ」と呼ばれる現象の背景にある、制度の”引き継ぎ”の構造について考えてみます。
データで見る、増え続ける「問題」の数
まず、客観的な数字を見てみます。文部科学省の令和6年度調査(2024年度・過去最多)によると、次のような結果が出ています。
| 項目 | 件数 |
|---|---|
| 不登校(小中学校) | 約35万4千人 |
| 不登校(高校) | 約6万8千人 |
| いじめ認知件数(小中高・特別支援) | 約76万9千件 |
| 暴力行為発生件数(小中高) | 約12万9千件 |
これらを単純に合計すると、130万件を超えます。しかもすべての項目が過去最多を更新し続けています。支援や制度が整ってきているはずなのに、なぜこれほど増え続けるのでしょうか。
「小1プロブレム」とは何か
保育園・幼稚園までは座って話を聞けていた子が、小学校に入った途端、授業中に立ち歩いたり、指示に従えなかったりする状態を指して「小1プロブレム」と呼びます。
ここで見過ごされがちなのが、幼児期の教育と小学校教育の”接続”の難しさです。文部科学省は教育課程を円滑に接続する必要性を認識していますが、実際には各園ごとに方針が異なり、接続がうまくいっていないのが現状です。
さらに見過ごせない指摘があります。行政側(教育委員会)は、小1プロブレムの原因を「接続の問題」よりも「子どものしつけの問題」「子ども自身の問題」として捉える傾向があるという調査結果です。つまり、制度側の引き継ぎの課題が、いつの間にか子ども個人の問題にすり替えられてしまっている可能性があるのです。
「中1ギャップ」とは何か
小学校では平気だった子が、中学校に入った途端に不登校になったり、学習意欲を失ったりする現象です。中学校に上がると学習内容の難易度・範囲が急激に増え、定期テストによる成績の数値化・順位付けも始まり、プレッシャーが一気に強まります。
加えて、担任制から教科担任制への変化、部活動の開始など、生活環境そのものが大きく変わります。小学校で築いた人間関係や生活リズムが、一度リセットされるような感覚を持つ子も少なくありません。
図で見る、接続の”つまずきポイント”

⚠ = 環境が大きく変わる「接続の段差」。ここで戸惑う子が、問題行動や不登校として現れやすい。
こうして図にすると分かりやすいのですが、問題は「子ども」の中にあるのではなく、段差そのものにあるとも言えます。段差を越えられるかどうかは、その子の”努力不足”ではなく、周囲の環境設計に大きく左右されます。
「子どものせいにしない」という視点
知り合いの研究者から、こんな指摘をもらったことがあります。「保育園・幼稚園までは元気に通えていた子が、小学校に入ると発達障がいや学習障がいと言われたり、問題行動を起こすとされるケースが、全国で年間100万件を超える規模になっている。教え方が時代に合わないとか、先生が追い詰められているとか、色々な要因があるはずで、子どものせいばかりにしていては解決しない」。
この視点は、先ほどのデータや制度上の課題とも一致します。子ども個人の資質の問題として片付けるのではなく、接続の段差そのものを、社会全体でどう緩やかにしていくかという視点が必要なのだと思います。
家庭・PTA・地域でできること
- 入学・進学前に、できるだけ新しい環境の情報を子どもと共有しておく(学校見学、先輩の話を聞く機会など)
- 「できないこと」を叱るのではなく、「慣れるまで時間がかかる」ことを前提に見守る
- PTAや地域が、幼保小中の接続を意識したイベントを企画する(例えば、年長児と小学生の交流会、小6と中1の交流会など)
- 先生・保育士同士が情報交換できる場を、保護者側からも後押しする
まとめ
小1プロブレムも中1ギャップも、子ども一人ひとりの「弱さ」の問題として語られがちです。しかし実際には、保育園・幼稚園から小学校、小学校から中学校への”接続”がうまく機能していないという、構造的な課題が背景にあります。
「子どものせいにしない」という視点を持つこと。それが、増え続ける不登校・いじめ・暴力行為の数字に対して、私たち大人ができる、最初の一歩なのだと思います。
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段差につまずいた子を責めるのではなく、その段差を一緒に低くしていく大人でありたいと思います。


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