「言語化力」が今、大人にも子どもにも求められている理由

読解力・表現力

正直に言います。最近、ビジネス書のランキングを見ていると、コミュニケーション力・伝え方・言語化力といったテーマの本が、やたら目につきます。仕事をしながら子育てをしているお母さんの中にも、「もっと的確に伝えられるようになりたい」と感じている方は多いのではないでしょうか。

そして、大人が欲しいと思っている力は、大抵の場合、自分の子どもにも身につけてほしいと思うものです。実はこの2つ、別々に取り組む必要はありません。子どもとの日常会話が、そのまま自分の言語化力を鍛える練習にもなるという視点で、家庭でできることを考えてみます。

語彙力と言語化力は、似ているようで違う

以前「語彙力を伸ばす家庭の会話術」という記事を書きましたが、語彙力と言語化力は少し違うものです。

  • 語彙力:知っている言葉の数
  • 言語化力:自分の考えや気持ちを、言葉にして相手に伝える力

言葉をたくさん知っていても、それを使って自分の気持ちをうまく表現できるとは限りません。逆に、知っている言葉が少なくても、伝えようとする姿勢があれば、少ない言葉でも相手に届くことがあります。

なぜ今、大人が言語化力を求めているのか

少し調べてみると、いくつかの背景が見えてきました。

変化影響
リモートワーク・非対面コミュニケーションの定着表情・仕草が伝わらない分、言葉で明確に伝える必要が増えた
AIの発展知識はAIが代替する分、人同士の言語化されたやり取りの比重が増えた
「察する」文化からの脱却フラットな組織・多様な価値観の中、言葉にしないと伝わらない場面が増加

一つは、リモートワークや非対面コミュニケーションの定着です。コロナ禍をきっかけにチャットツールやWeb会議が一般化し、対面なら自然に伝わっていた表情や仕草が読み取れなくなりました。以前は経営層・管理職だけに求められていたスキルが、今はあらゆる立場の人に求められるようになっています。

もう一つは、AIの発展です。知識を得ること自体はAIが代替してくれるようになった分、人と人との言語化されたやり取りの重要性が相対的に増しています。作業が効率化されるほど、その分の時間を対話に使う必要が出てきているとも言えます。

さらに、「背中を見て覚えろ」「空気を読め」という文化から、多様な価値観・フラットな組織構造への移行も影響しています。察してもらうのではなく、言葉で明確に伝えないと伝わらない場面が、社会全体で増えているのだと思います。

こうした背景を知ると、「なぜ自分の子どもにも言語化力をつけさせたいのか」が見えてきます。子どもたちが大人になる頃には、今以上にリモート・非対面のコミュニケーションが当たり前になり、AIと共に働くことも日常になっているはずです。今の大人が苦労して身につけようとしている力を、子どものうちから自然に育てておければ、それだけ将来の負担が減るのではないか、と感じています。

読書が言語化力の土台になるという考え方

幻冬舎の創業者である見城徹さんは、著書『読書という荒野』の中で、読書によって「想像力」と「言語化能力」が同時に鍛えられると述べています。他者の人生が投影された物語を読むことで「自分だったらどうするか」と考える想像力が育ち、それを自分の言葉で捉え直す過程で言語化能力が磨かれる、という考え方です。適切な言葉を選べなければ深く考えることも難しくなる、という指摘は、子どもの言語化力を考える上でも参考になります。

『読書という荒野』(見城徹・幻冬舎)

AIの時代だからこそ、言葉にする力が価値を持つ

知識を得ること自体は、AIの発展によってどんどん簡単になっています。だからこそ、自分の考えや感情を、自分の言葉で表現する力が、これまで以上に価値を持つようになってきていると感じています。これは子どもだけでなく、大人にとっても同じことが言えます。

「表現すること」自体を楽しむという視点

大阪の地域活動で知り合った、ことばの学びを専門にする方々の取り組みが、とても参考になります。この夏、「そうぞうする・つたえる・みんなでつくる」をテーマに、子ども向けの表現活動が3日間にわたって行われました。

前半は、演劇と子どもの表現活動を専門にする講師を招き、体を動かしながら表現したり、互いに伝え合ったりする活動。その内容を受けて、子どもたちは模造紙を使って物語づくりに取り組み、最終日には自分たちで作った物語を、みんなの前で発表するという流れでした。

この取り組みで大事にされているのは、「正解の言葉」を教えるのではなく、声や体を使って表現すること自体を楽しむという姿勢です。実際、子どもたちが安心して自分らしく表現し、友だちと楽しそうに過ごしている様子が、活動の一番の成果だったと聞いています。地域の小学校の先生や、他の地域の中学・高校で国語を教えている先生方も、この取り組みに関心を寄せてボランティアとして参加していたそうです。教育に関わる立場の人たちからも注目されている取り組みだということが分かります。

小さな声の子も、大きな声の子も、つまりながら話す子も、それぞれがその子の持ち味です。うまく話せるかどうかより、「伝えようとすること」自体を楽しめる環境を作ることが、言語化力の土台になるのだと思います。

家庭でできること

専門家のような取り組みを完全に真似ることはできなくても、家庭でできることはあります。

  • 「今日どうだった?」ではなく「今日、一番びっくりしたことは?」など、具体的に聞いてみる
  • 子どもの説明が拙くても、途中で正解を教えず、最後まで聞く
  • 絵や身振りなど、言葉以外の表現も一緒に受け止める
  • 親自身も「今日こう思った」と、自分の言語化する姿を見せる

うまく言葉にできないことを咎めるのではなく、「伝えようとした」こと自体を認める関わり方が、結果的に言語化力を育てるのだと思います。

これは、実は親自身のトレーニングにもなります。子どもの拙い話を「要するにどういうこと?」と自分の中で要約してみたり、自分の一日の出来事を子どもに分かる言葉で話し直してみたり。子どもに合わせて言葉を選ぶ作業そのものが、仕事で求められる「分かりやすく伝える力」の練習にもなっていると感じています。子育てと自己研鑽を別々に頑張るのではなく、重なる部分として捉え直すと、少し気持ちが楽になるかもしれません。

まとめ

  • 言語化力は、語彙力とは別の「自分の考えを言葉にして伝える力」
  • 読書を通じて想像力と言語化能力が同時に鍛えられるという考え方もある(見城徹『読書という荒野』)
  • 「正解の言葉」より「伝えようとすること」自体を楽しむ姿勢が土台になる
  • 家庭では、具体的な問いかけ・最後まで聞く姿勢・親自身が言語化する姿を見せることが大切
  • 子どもに合わせて言葉を選ぶ作業は、親自身の「分かりやすく伝える力」の練習にもなる

アセラズ、クサラズ、アキラメズ。

うまく話せなくても、伝えようとする姿勢そのものを、まずは認めてあげたいと思います。

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