6割が月1冊も本を読まない時代に、あえて読書をすすめる理由

スマホ・ゲーム対策

結論から言います。タイパを重視する時代だからこそ、あえて時間のかかる読書に価値があると思っています。今日は、そう考える理由をデータとともにまとめます。

「読まない」大人が、ついに6割を超えた

文化庁が実施した令和5年度「国語に関する世論調査」によると、1か月に1冊も本を読まない人の割合が62.6%という結果が出ました。これまで4割台で推移していたのが、今回の調査で一気に急増し、過去最高の数字になっています。

ただし、この数字だけを見て「今の人は活字から離れている」と考えるのは早計です。同じ調査で、「読まない」と答えた人の75.3%が、SNSやインターネット記事などの活字は「ほぼ毎日読んでいる」と回答しています。つまり、活字そのものから離れているのではなく、「本という形式」から離れているというのが正確なところだと思います。

子どもの読書時間は、この10年でどう変わったか

ここで、非常に示唆に富むデータがあります。ベネッセ教育総合研究所と東京大学社会科学研究所が共同で行った調査(2024年、約1万2千組の親子が対象)によると、1日に全く本を読まない子どもの割合は52.7%。2015年の調査時点では34.3%だったので、約1.5倍に増えたことになります。

学年2024年の不読率2015年比
小学1〜3年33.6%約+14〜22ポイント
小学4〜6年47.7%同上
中学生59.8%同上
高校生69.8%同上

1日の読書時間の平均も、小学4〜6年で15.6分、高校生で10.1分と、2015年と比べて小学4年以上で約5〜6分減っています。学年が上がるほど読まなくなる傾向は、全国学校図書館協議会の「学校読書調査」(小学生の不読者率9.6%、中学生24.2%、高校生55.7%)とも同じ方向性ですが、今回の調査で分かったのは、その減り方が、10年前よりもさらに加速しているということです。

スマホの使用時間が、読書時間を直接押しのけている

そして、この調査で最も重要なのが、スマホ使用時間との関係です。1日のスマホ使用時間は、小学4〜6年で33.4分、中学生で95.7分、高校生で138.3分。2015年と比べて、それぞれ約22〜52分増加しています。

さらに、スマホの使用時間と読書時間には、はっきりとした反比例の関係が見られました。

スマホ0分の読書時間スマホ3時間以上の読書時間
小学4〜6年17.8分9.5分
中学生21.7分12.5分

スマホを長く使う子どもほど、読書時間がほぼ半分近くまで落ち込んでいます。これは、「読書をする時間がない」のではなく、「スマホに置き換わっている」と見るのが正確だと思います。調査を担当した東京大学の秋田喜代美名誉教授(教育心理学)は、読書と学力には関連があり、授業の中で紙や電子の書籍に触れる機会を増やす必要があると指摘しています。

学校読書調査とベネッセ調査は対象学年や調査方法が異なるため単純比較はできませんが、どちらの調査を見ても、学年が上がるにつれて読書が失われていく傾向は共通しています。そして今回のデータから見えてきたのは、その最大の要因がスマホの使用時間の増加だということです。

倍速視聴も、もはや当たり前になった

動画の視聴スタイルも、同じ流れの中にあります。ドコモモバイル社会研究所の調査では、全体の5割強が動画を倍速視聴すると回答しており、10代男女・20代女性では約7割にのぼります。別の調査では、Z世代の倍速視聴率は70.0%で、快適に感じる再生速度は1.5倍速という結果も出ています。倍速視聴の理由として最も多いのは「時間がもったいないから」でした。

本を読まないことも、動画を倍速で見ることも、根っこにあるのは同じ価値観です。限られた時間の中で、できるだけ多くの情報を、できるだけ効率よく得たい。これ自体は、悪いことでも間違ったことでもありません。

それでも、読書には「圧縮できない価値」がある

文部科学省の令和7年度全国学力・学習状況調査では、家庭の社会経済的背景を測る代わりの指標として「家にある本の冊数」を使っています。この調査によると、本の冊数が多い家庭の子どもほど、各教科の正答率がはっきりと高いという結果が出ています。

0〜25冊26〜100冊101冊以上
小学校国語(平均正答数/14問)8.5問9.7問10.2問
小学校算数(平均正答数/16問)7.9問9.7問10.7問
中学校数学(平均正答数/15問)6.2問7.7問8.6問

興味深いのは、これが国語だけでなく、算数・数学にも表れている点です。読書は国語力だけでなく、物事をじっくり考える力そのものを育てているのではないか、と考えられます。

読書が育てるのは「立ち止まって考える力」

倍速視聴や、SNSの短い記事には、大きな利点があります。短い時間で、多くの情報に触れられるということです。一方で、読書には、それとは違う性質があります。ページをめくりながら、自分のペースで、立ち止まって考える時間があるということです。

これは、以前このブログで書いた「言語化力」の話ともつながります。幻冬舎の創業者である見城徹さんは、著書『読書という荒野』の中で、読書によって「想像力」と「言語化能力」が同時に鍛えられると述べています。他者の人生が投影された物語を読むことで想像力が育ち、それを自分の言葉で捉え直す過程で言語化能力が磨かれる、という考え方です。倍速で消費する情報からは、この「捉え直す時間」が奪われてしまいます。

ショート動画に慣れた子には、どんな本から始めればいいか

とはいえ、TikTokやショート動画に慣れている子に、いきなり分厚い小説を渡しても、ページを開く前に挫折してしまいます。「立ち止まる時間」への入り口は、もっと軽いものでいいと思います。いくつか、試しやすい切り口を紹介します。

①1話が短い・テンポの良い本から

ショート動画に慣れた子は、「区切りの早さ」に安心感を持っています。1話が数ページで完結する短編集や、テンポの良い会話文が中心の本は、ハードルが低くおすすめです。「今日はここまで」と、自分から本を閉じられる達成感が持てる形式が向いています。

②すでに知っている世界観の本

好きなYouTuberやゲーム、アニメと近いテーマの本は、抵抗感なく入りやすい傾向があります。「知っている」を入り口にして、「知らなかった深さ」に触れさせるのがポイントです。

③図鑑・ビジュアル重視の本

文字だけの本が苦手でも、写真やイラストが多い図鑑・ノンフィクションなら、パラパラめくるだけでも「立ち止まる時間」になります。文字を読むことより先に、ページをめくる習慣自体を作るという考え方です。

④漫画・絵本も、立派な読書

文字と向き合い、想像する時間があれば、それも読書の一つです。「活字の本でなければいけない」というハードルを、まず親自身が下げることが、結果的に子どもを本に近づける近道になると思います。

「本を読め」ではなく「立ち止まる時間を作る」という提案

だからといって、「今すぐ本を読みなさい」と子どもに言っても、あまり効果はないと思います。それよりも大事なのは、「立ち止まって考える時間」自体を、生活の中に意識して作ることではないでしょうか。

  • 寝る前の10分だけ、スマホを置いて本を開く時間を作る
  • 親自身が「今、この本のこの部分が面白い」と話す姿を見せる
  • 読んだ内容を全部理解できなくてもいい、「立ち止まった」という経験そのものを大切にする
  • 学校の朝読書だけに任せず、家庭でも同じような「決まった読む時間」を、細く長く作っておく

タイパを否定する必要はありません。ただ、その一方で、あえて立ち止まる時間を、意識的に生活の中に残しておく。それが、これからの時代に読書が持つ意味なのだと思います。

まとめ

  • 1か月に1冊も本を読まない大人は62.6%まで増加。ただし活字自体から離れているわけではなく、「本という形式」から離れている
  • 子どもの不読率(0分読書)も2015年の34.3%から2024年は52.7%へと約1.5倍に増加
  • スマホの使用時間が長い子どもほど、読書時間が明確に短くなる傾向がデータで確認されている
  • 文科省の調査では、家にある本の冊数が多い家庭ほど、国語だけでなく算数・数学の正答率も高い傾向がある
  • ショート動画に慣れた子には、短編・知っている世界観の本・図鑑・漫画など、軽い入り口から始めるのがおすすめ
  • 「本を読め」と言うより、生活の中に「立ち止まる時間」を意識的に作ることが大切

アセラズ、クサラズ、アキラメズ。

効率を求める毎日の中で、あえて立ち止まる時間を、少しだけ残しておきたいと思います。

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