結論から言います。「紙かデジタルか」という議論を、よく見かけるようになりました。ただ、実際に大きな結果を出している現場を調べていくと、答えは「どちらか」ではなく、「両方を、正しい順番で組み合わせる」ことにあるようです。
135万インプを集めた、一つの投稿
ある投稿が、SNSで大きな話題になりました。東京大学の酒井邦嘉教授の指摘として、北欧がデジタル教科書から紙に回帰している理由が紹介されていたのです。紙の教科書は「どこに何が書いてあったか」という空間的な手がかりが記憶を助けるのに対し、デジタルはスクロールによって位置情報が希薄になり、「限られたものを繰り返し学ぶ」という学習の基本が崩れてしまう、という指摘でした。
「教育は効率化の対象ではなく、人間が人間を育てる営みである」という言葉に、多くの人が共感し、この投稿は135万回以上表示されるまで拡散しました。
一方で、進む「情報教育拡充」の動き
ほぼ同じ時期に、まったく逆方向とも思える動きも進んでいます。次の学習指導要領では、小学校に「情報の領域」が、中学校には「情報・技術科」が新設される予定です。ただし、総授業時数は増やさず、既存の教科の時間を削って確保する方針のため、公立小学校の教員へのアンケートでは、反対が56%と、賛成の28%を大きく上回りました。
「デジタル教育への懐疑」と「情報教育の拡充」。この、一見矛盾する2つの潮流が、今、同時に社会の中で進行しています。
「紙かデジタルか」ではなく、両方を使った小学校があった
この対立構造を見ていて、思い出した実践がありました。東京都町田市立小山田南小学校です。「百ます計算」の生みの親として知られる陰山英男氏を学力向上アドバイザーに迎え、2024年12月から「基礎・基本 集中反復で学び続ける力を高める」という取り組みを始めています。
その結果は、驚くべきものでした。わずか半年ほどで、テストの平均点が60点台から90点前後にまで急上昇。全国学力テストでも、学力を4段階に分けたときの最高位の子どもの数が、算数で6倍、国語で16倍に増えたといいます。応用力の土台とされる文章問題においても、全国平均だけでなく東京都平均をも上回る結果を出しました。
“合わせ技”の中身
ここで注目したいのが、この学校が掲げている取り組みの中身です。「集中反復」「漢字・算数集中速習」という、まさに紙と反復による基礎固めの要素がある一方で、同時に「デジタル百ます英単語」「生成AI」「STEAM」という、最先端のデジタル活用も、同じ紙面に並んで掲げられています。
つまりこの学校は、「紙かデジタルか」を選んでいるのではありません。まず紙と反復で基礎をとことん固め、その土台がしっかりできた上で、デジタルやAIを積極的に活用する。この「順番」と「組み合わせ」こそが、結果を出した本当の理由なのではないかと思います。
AIが得意なこと、まだ苦手なこと
以前このブログでも、AI家庭教師について取り上げました。AIは、知識を教えることにおいては、既に人間の講師を上回りつつあります。ただ、基礎を定着させる「反復」の部分や、「続けられるように寄り添う」という部分は、依然として人の手や、地道な取り組みが重要な役割を果たしています。
小山田南小学校の実践は、まさにこの構造を体現しています。反復という、地道で人間的な土台があってこそ、その上に乗るデジタル・AIの活用が、本当の意味で効果を発揮するのだと思います。
まとめ
- 「デジタル教科書より紙」という指摘が、135万インプという大きな反響を呼んだ
- 同時期に、情報教育の拡充には、現場の教員の半数以上が反対しているという現実もある
- 町田市立小山田南小学校では、紙・反復による基礎固めと、デジタル・AI活用を組み合わせ、半年でテスト平均点が60点台から90点前後に急上昇した
- 「紙かデジタルか」ではなく、「まず基礎を固め、その上でデジタルを活用する」という順番が、結果を出す鍵になっている
アセラズ、クサラズ、アキラメズ。
どちらか一方を選ぶ必要はありません。基礎という土台があってこそ、新しい技術は、本当の力を発揮するのだと思います。


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