結論から言います。中学受験する家庭が増えているのには、はっきりした理由があります。でも、その先には、あまり語られない現実もあります。今日は、両方を正直にまとめます。
なぜ、中学受験する家庭が増えているのか
肌感でも感じる方は多いと思いますが、実際にデータでも、中学受験は増加傾向にあります。理由は、主に4つ考えられます。
- 大学入試改革への「先回り」:新課程の共通テストで「英語力」「思考力」が重視されるようになったことが、若い保護者層に広く伝わっている
- 公立中学校への漠然とした不安:「難関校を目指したいわけではないが、子どもに合う学校があれば」という、緩やかな動機での参入が増えている
- 私立高校の無償化という、経済的な後押し:2026年4月からの高校無償化が、私立中高一貫校を選びやすくする追い風になっている
- 「中堅校シフト」という変化:最難関校だけでなく、堅実に進学実績を上げている中堅・上位校が評価される傾向が強まっている
中高一貫校は、大学受験に最適化されている
中高一貫校は、高校受験を経ずに6年間を一貫して過ごせるため、「大学受験に最適化されたカリキュラム」が組まれています。標準的には、中1〜2年で中学3年間分、中3〜高2年で高校3年間分を終える、非常に速いペースです。難関大学合格者数の上位を、中高一貫校が占めているというデータもあります。
その裏で、私立中学の不登校が増えている
ここからが、あまり語られない現実です。文部科学省の調査によれば、2024年度で私立・国立中学の不登校割合は3.1%。35人学級なら、クラスに1人という計算です。
一方、公立中学は7%台という数字があります。単純に数字だけ見れば、私立の方が低く見えます。でも、ここが大事なポイントです。
「低い」と見るか、「高い」と見るか
公立中学は、住んでいる地域によって自動的に決まる学校です。合う・合わないの選別なしに入学するのに対し、私立中学は入試という選別を経ているにもかかわらず、一定数のミスマッチが起きています。「自ら選んで、努力して入った場所」で、35人に1人が通えなくなっているという事実は、見方によっては深刻です。
実際、「合格したのに通えない…私立中の不登校は”統計以上”に深刻」という指摘もあります。数字の低さだけを見て安心するのは、早計かもしれません。
なぜ、入試を突破したのにミスマッチが起きるのか
理由は、いくつか考えられます。
- 入試は「学力」しか測っていない:校風との相性、性格、ペースなど、「合う・合わないか」を測る仕組みが、入試のプロセスにほとんど組み込まれていない
- 受験期にすでに限界だった:多くの専門家が指摘しているのは、「入学後に燃え尽きた」のではなく、小6の受験期の時点で、すでに心理的な限界に達していたケースが多いということ
- 合格がゴールになってしまう:合格した瞬間に目標が達成されてしまい、「入学後、どう過ごすか」というビジョンが、意外と考えられていない
- カリキュラムの速さについていけない:一度つまずくと、取り戻すのが難しい
- 「頑張って入ったのに」というプレッシャー:公立なら「合わなかった」で済む話が、私立だと後に引けない心理になりやすい
私立ならではの、重い現実
私立の不登校が「統計以上に深刻」と言われる背景には、公立にはない事情があります。
- 公的な受け皿(教育支援センターなど)が公立中心で、私立には整備されていないことが多い
- 私立の学費を払い続けながら、通えていない状態が続く、経済的な二重負担
- 不登校への対応は学校ごとにバラバラで、続くと公立への転校を勧められるケースもある
もしもの時への備え、事前にどれだけ考えられているか
正直なところ、受験期は「合格すること」に、家族全員のエネルギーが集中します。「もし通えなくなったら」というリスクにまで、事前に意識を向ける余裕は、構造的に生まれにくいのが実情だと思います。多くの記事が「予想しなかった落とし穴」「頑張った経験が裏目に出る」という表現で、この問題を描いているのも、その裏返しです。
それでも、その先には道がある
ここまで、重い現実を書いてきましたが、大切なことをお伝えします。私立でのミスマッチは、決して「終わり」ではありません。
東京都には、私立中高一貫校で不登校になった生徒を積極的に受け入れる「チャレンジスクール」という制度があります。都立新宿山吹高校の校長先生は「私立中高一貫校で不登校になり、入学する子は一定数いる」と語り、ICTの世界大会に出場したり、クラゲの研究をしたりする個性豊かな生徒が、東大や早慶などの難関大学にも進学しているといいます。
大阪にも、次の道はある。ただし、少し性質が違う
大阪府にも、大阪府立桃谷高校という、3部制の単位制による定時制・通信制課程を持つ公立高校があります。ただし、その性質は少し異なります。桃谷高校は、15歳から70代まで幅広い年代の生徒が学ぶ、間口の広い学校です。「自分のペースで学び直す」という位置づけが強く、新宿山吹高校のような「個性を伸ばして難関大へ」という、前向きで攻めの打ち出し方とは、少しトーンが違います。
どちらが良い・悪いという話ではありません。「もう一度、立て直す場所」として選ぶのか、「そこから新しく伸ばしていく場所」として選ぶのか。子どもの状態や、求めているものによって、合う場所は変わってくるのだと思います。
大阪にも、そういう学校があればいいのに
ここまで調べてきて、率直に思うことがあります。大阪にも、新宿山吹高校のような「前向きに伸ばしていける学校」が、もっとあればいいのにということです。
桃谷高校のような「立て直す場所」は、間違いなく必要です。心身ともに疲れた状態から、無理なく自分のペースを取り戻せる場所があることは、大きな救いです。ただ、それだけでなく、「不登校を経験したからこそ育った個性を、思い切り伸ばせる場所」も、選択肢としてもっとあってほしいと思います。
先日取材した「つながるin2026」でも、学校法人や公立校の参加が去年より増えていました。これは、大阪でも少しずつ、選択肢が広がりつつある兆しなのかもしれません。「立て直す場所」と「伸ばしていく場所」、その両方が当たり前に選べる社会に、これからなっていってほしいと思います。
まとめ
- 中学受験が増えている背景には、大学入試改革、公立への不安、高校無償化などがある
- 私立・国立中学の不登校割合は3.1%だが、「自ら選んだ場所」でのミスマッチという意味で、数字以上に深刻な面がある
- ミスマッチが起きるのは、入試が「学力」しか測っておらず、受験期にすでに限界だったケースも多いため
- 私立特有の、公的支援の薄さや経済的な二重負担という重さもある
- それでも、東京のチャレンジスクールのように、そこから道は開ける
- 大阪にも桃谷高校のような受け皿はあるが、「立て直す場所」としての性質が強い
- 「伸ばしていく場所」も、大阪にもっと増えてほしいという願いがある
アセラズ、クサラズ、アキラメズ。
中学受験は、多くの可能性を開く選択です。同時に、その先にどんな道があるかも、知っておいてほしいと思います。


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