PTAが「横串」になれない理由。全国大会の理想と、現場の距離

言いづらいシリーズ

結論から言います。「点と点をつないで、面にする」——これが、相互依存フェーズにあるPTA会長に求められる、最も難しい仕事だと、前回の記事でお伝えしました。今回は、なぜそれが難しいのか、もう少し掘り下げてみたいと思います。

誤解しないでいただきたいのですが、これは日本PTA全国協議会や、全国大会そのものへの批判ではありません。むしろ、全国大会が掲げる理想は、とても大切なものだと思っています。ただ、その理想と、現場の実感との間に、構造的な距離があるのも事実だと感じています。

全国大会が描く、「横のつながり」という理想

日本PTA全国協議会が主催する全国大会は、全国9ブロックの輪番制で開催され、毎回7,000人から9,000人規模の参加者が集まります。掲げられるテーマは、「創造と協働」「家庭・学校・地域の連携」といった、”横のつながり”を大切にするものが多く見られます。

全国各地のPTA活動や成果を研究協議し、新しい時代の要請に応えるPTAのあり方を探求する。これは、まさに点と点を線でつなぎ、面にしていこうとする、相互依存フェーズの理想そのものだと思います。

一方で、現場では、少し違う動きも進んでいます

ただ、単位PTA(各学校のPTA)の現場に目を向けると、少し違う流れも見えてきます。PTAは元々、2016年の熊本地方裁判所の判決でも確認された通り、「入退会自由の任意加入団体」です。ここ数年、この任意加入であることを明示し、加入意思を確認するPTAが、全国的に増えてきています。

東京都PTA協議会の実態調査によると、「任意加入の説明」と「加入意思の確認」を両方行っているPTAの割合は、年々増加傾向にあります。これは、悪いことではなく、むしろ健全な変化だと思います。ただ、同時に、退会者が増えているという声も、各地から聞こえてきます。

横串の「一番外側」から、形が変わり始めている

ここで、興味深い動きがあります。単位PTAの退会だけでなく、市区町村郡単位のPTA連合会そのものからの退会も、選択肢の一つとして検討され始めているのです。

これは、誰かが悪いという話ではないと思います。むしろ、それぞれの単位PTAが、自分たちの現場に合った運営を模索した結果、たどり着いた選択なのだと思います。ただ、結果として、「地域」「全国」という、より大きな面を作るための横串が、一番外側から少しずつ、形を変えつつある、というのが今の状況なのだと感じています。

なぜ、このギャップが生まれるのか

正直に言うと、これは単年度制という構造そのものに、大きな理由があると思っています。前回の記事でお伝えした通り、PTA会長になる人の多くは、「反依存フェーズ」(頼らない、抱え込む、一人で頑張ろうとする段階)にいることが多いという実感があります。

せっかく1年かけて、地域や他校との「線」を築けたとしても、次の年には別の会長に代わり、また一からのスタートになる。これでは、線が積み重なって面になる前に、毎年リセットされてしまいます。これは、個々の会長の力量の問題ではなく、構造そのものが抱える難しさなのだと思います。

それでも、新しい形の支援は生まれている

一方で、こうした状況を踏まえた、新しい形の支援も生まれ始めています。例えば、全国PTA連絡協議会では、2026年度から、不登校児童生徒の学びの継続を支援する新制度を開始しています。単年度で入れ替わる個々のPTAだけでは難しい取り組みを、横断的な団体が支える、という形です。

「面」を作るのは、一つのPTAだけでは難しくても、こうした横断的な支援の仕組みが少しずつ育っていくことで、違う形の”横串”が生まれていくのかもしれません。

まとめ

  • 全国大会は「横のつながり」という理想を掲げ、全国規模で開催されている
  • 一方、現場では任意加入の明示・退会者の増加という流れが進んでいる
  • 単位PTAだけでなく、連合会そのものからの退会も選択肢として検討され始めている
  • 背景には、単年度制でつながりが毎年リセットされてしまうという、構造的な難しさがある
  • それでも、全国PTA連絡協議会のような横断的な支援の仕組みが、新しい形で育ちつつある

アセラズ、クサラズ、アキラメズ。

一人の会長が、一年で面を作ることはできません。でも、点を線にしようとした一年一年は、きっと無駄にはならないのだと思います。

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