「7つの習慣」とPTA運営、実は同じ話をしていた

言いづらいシリーズ

結論から言います。当番を廃止しても、部活動を地域に移しても、組織はまた同じように壊れることがあります。仕組みを変えても解決しない。本当に見るべきは、そこに関わる人間の「成長段階」でした。

これは、私が一から考えた理論ではありません。家族療法士のロバート・タイビーが提唱した、成人発達の4段階という考え方があります。この理論を、7年間のPTA活動の中で見てきた光景に当てはめてみたところ、驚くほど、しっくりきました。しかも調べていくと、ベストセラー「7つの習慣」が説く、人の成長の最終段階とも、深く重なることが分かりました。今日は、その話をしたいと思います。

人には、必ず通る4つのフェーズがある

家族療法士ロバート・タイビーは、人が成長していく過程を、4つの段階として整理しています。中心にあるのは、「人は助け合うことによって成長する」という考え方です。

依存:指示がないと動けない

「前年通りでお願いします」が口癖。マニュアルがないと不安になり、「これで合っていますか?」と何度も確認する。誰もが最初に通る、自然な段階です。心理学の世界では、この時期の土台を、愛着理論を提唱したボウルビィの研究に重ねる見方もあります。

反依存:とにかく今のやり方に反発する

「なぜこんな無駄なことを」「今までのやり方はおかしい」。過去のやり方を次々と否定し、新しい提案を持ち込みます。一見頼もしいですが、周囲を置いてけぼりにしがちです。タイビーの理論では、実はこの時期こそが、一番しんどい時期だとされています。「大丈夫です」が口癖になり、一人で抱え込んでしまいやすいのです。

自立:自分の責任で、静かに動く

「まずは自分がやってみます」。必要以上に周りを説得せず、まず動いて結果で示す。目立たないけれど、組織を裏で支えている中心人物です。この段階は、自己決定理論を提唱したデシとライアンの研究とも、重なる部分があります。

相互依存:人の力を引き出す

「あなたの得意なことを、任せたい」。自分がすべてを背負うのではなく、周りの強みを見抜き、任せられる人です。

会長になるのは、実はフェーズ2の人が多い

ここが、今日一番伝えたいことです。会長という役割を引き受ける人の中で、実は圧倒的に多いのが、フェーズ2、反依存の人ではないかと思っています。

反依存は、既存のやり方への反発が強い時期です。「改革しよう」という言葉が、自然と出やすくなります。そして、自分にしかできないことをやり、それをアピールする。

問題は、その先です。フェーズ2の人が起こした改革は、その人個人の力に依存していることが多く、属人的です。だから、その人が卒業した後、同じことができる人がいないまま、また元の状態に戻ってしまう。当番文化を廃止したチームにも、部活動を地域に移した学校にも、同じ構造で起こり得ることです。仕組みを変えても、支える人が育っていなければ、問題は形を変えて戻ってきます。

フェーズ3にも、実は落とし穴がある

フェーズ3の人がいると、組織は驚くほど壊れにくくなります。特徴的なのは、こうした人たちは長年、活動を続けてきているということです。フェーズの成熟には、時間の蓄積が欠かせません。

ですが、自分の力で組織をうまく回せている、その心地よさに慣れてしまうと、逆に新しい人の参加や、変化そのものを、無意識に避けてしまうことがあります。「自分がこの場所から離れたくない」という気持ちも、同じところから生まれます。改革したがるが持続しないフェーズ2に対して、フェーズ3は、うまくいきすぎているがゆえに、変化を拒んでしまうことがあるのです。

フェーズ4だけが持つ、「点を線にする力」

フェーズ1から3までは、すべて自分自身の成長の物語です。主語は、常に「自分」です。フェーズ4だけが違います。ここで初めて、他者の成長に責任を持つという、まったく別の課題が発生します。

私の感覚では、フェーズ4にいる人は、点と点を結んで線にし、その線を面として動かせる人だと思っています。一人ひとりの得意なこと、抱えている事情、まだ気づいていない可能性。それぞれはバラバラな「点」に過ぎません。フェーズ4の人は、「この人とこの人を組ませたら、うまくいくかもしれない」と、点と点を意図的に結び、線にしていきます。その線がいくつも重なったとき、組織全体が、一つの生き物のように、面として動き出すのです。

これが、一番難しいところです。自分の成長は、自分の意志でコントロールできます。でも、他人と他人を結びつけ、面として動かすことは、自分の意志だけではコントロールできません。相手のペース、相手の意欲、相手との相性。すべてが、自分の手の届かないところにあります。

「7つの習慣」との、意外な共通点

ここまで読んで、ピンときた方もいるかもしれません。ベストセラーとして知られる「7つの習慣」の著者、スティーブン・コヴィーも、人の成長を「依存」から「自立」、そして「相互依存」へと進む道のりとして描いています。自立した人は「私はできる」というように「私」を主語にしますが、相互依存に達した人は、「私たちはできる」というように、「私たち」を主語にするようになるとされています。

ビジネス書の名著として知られるこの考え方が、PTAという、まったく畑違いの現場での実感と、驚くほど重なっていたことに、私自身、調べていて驚きました。人の成長には、分野を問わず、共通する型があるのかもしれません。

まとめ

  • 家族療法士ロバート・タイビーは、人の成長を依存・反依存・自立・相互依存という4段階で説明している
  • 会長になる人の多くは、実はフェーズ2であり、改革は属人的で持続しにくい
  • フェーズ3は組織を安定させるが、変化を避けてしまう落とし穴もある
  • フェーズ4だけが、点と点を結び、線にし、面として動かす力を持つ
  • この考え方は、ベストセラー「7つの習慣」が説く成長の道のりとも、深く重なっている

アセラズ、クサラズ、アキラメズ。

仕組みを変えることは、簡単です。難しいのは、点を線にできる人を、育てることです。

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