結論から言います。子どもの視力・見え方が、成長や将来にとって重要だと考える保護者は、89.0%にのぼります。でも、実際に子どもと「見え方」について話しているかというと、約4割の家庭が「あまり話していない・全く話していない」という結果が出ています。大切だと分かっていても、なぜか後回しにしてしまう。そんな、気づきにくいサインについてまとめました。
重要だと分かっていても、4割が話していない
メガネブランド「Zoff」を運営するインターメスティックが、全国の小学1年生から中学3年生の子どもを持つ保護者600人を対象に行った調査(2026年9月)によると、子どもの視力・見え方が成長や将来にとって重要だと考える保護者は89.0%にのぼりました。
ところが、実際に子どもと「見え方」について話すことがあるか尋ねたところ、「よく話す」14.0%、「ときどき話す」47.8%にとどまり、残りの約4割近くは「あまり話していない・全く話していない」という結果でした。重要性の認識と、実際の行動の間に、はっきりとしたギャップが生じています。
なぜ、受診のタイミングを逃してしまうのか
同じ調査では、学校健診などで視力低下を指摘された子どものうち、約4人に1人が1か月以内に眼科を受診できていないことも分かりました。対応を後回しにしたことがある保護者は約3割にのぼり、その内容として最も多かったのは「子どもへの見え方の確認」(50.5%)、次いで「眼科受診」(43.5%)でした。
受診が遅れる大きな理由として挙げられているのが、「子ども本人が困っていない」という点です。これは、見過ごされやすい、大切なポイントだと思います。子どもは、生まれてからずっと今の見え方で過ごしているため、それが「見えにくい状態」だと、自分では気づきにくいのです。本人が「困っていない」と言っても、実際には見えにくさを自覚できていないだけ、というケースが少なくないのだと思います。
スマホ・ゲームが、視力低下の大きな要因になっている
子どもの視力低下そのものも、年々進んでいます。高校生で裸眼視力1.0未満の割合は、2012年度の33.36%から2022年度には42.75%まで、10年で約10ポイントも増加しました。これは、スマートフォンが普及した時期と、ほぼ重なっています。
理由の一つは、画面を見る距離の近さです。本を読むときは30cmほどの距離で見られますが、スマートフォンなどのデジタル端末は、どうしても20cmほどの距離で見てしまいがちです。たった10cmの差に見えますが、近視の進行には1.5倍もの影響があるとされています。子どもは手が短いため、大人よりもさらに画面に顔を近づけてしまう傾向もあります。文部科学省の実証研究でも、デジタル教科書は紙の教科書より「目の疲れ」を感じやすいという結果が出ています。
見過ごすと、学校生活にも影響が出ることがある
視力低下を放置すると、姿勢が悪くなる、勉強がしづらくなるといった、学校生活への影響も報告されています。ただ、別の調査では、こうした生活への影響について、半数以上の親が把握できていなかったという結果もあります。親の目が届かない学校での様子だからこそ、気づきにくいのだと思います。
一度発症すると、進行は止まらないのか
近視は、一度発症すると17歳頃まで進行するとされ、年齢が低いほど、年間の進行量が大きい傾向があります。一つの目安として、11歳から16歳の間に、平均でマイナス6.00D(ジオプトリー)程度進むという報告もあります。
ただし、発症すると一方的に進行してしまうわけではありません。低濃度アトロピン点眼薬という治療法では、近視の進行を平均40%ほど軽減できたという報告があり、就寝中に特殊なコンタクトレンズをつけるオルソケラトロジーにも、進行を抑える効果が期待されています。進み方のスピードを、ある程度コントロールできる可能性がある、ということです。
これは、構造的な問題でもある
正直に言うと、今の社会は、構造的に近視が増えやすい環境になっています。アメリカの国立眼科研究所は、2050年までに世界人口の約半数が近視になると予測しており、その背景には、外で遊ぶ時間の減少があると指摘されています。ある英国の調査では、週に数回以上外で遊ぶ子どもは、わずか27%。2世代前(80%)と比べると、大幅に減っています。
ただ、これは「どうしようもない」という話ではありません。外遊びの時間を1日1時間ほど増やすだけで、近視の発症率が半減するという研究結果もあります。オーストラリアで12歳児を追跡した調査では、勉強やスマホを見る時間が長くても、屋外活動が1日2.8時間以上あれば、近視リスクは低く抑えられていた、という結果も出ています。
室内スポーツより、「太陽の下で過ごすこと」が鍵
ここで、一つ大事な補足があります。この「外遊び」の効果は、実は運動そのものではなく、**太陽光に含まれる「バイオレットライト」という光を浴びること**が、本質的な鍵だと分かってきています。
バイオレットライトは、紫外線より波長が長く、目に見える紫色の光です。研究によると、この光が、近視の進行を抑える働きに関わっているとされています。そして、このバイオレットライトは、**蛍光灯やLED照明にはほとんど含まれておらず、室内ではほぼ取り入れることができません**。実際、屋内での活動は、屋外活動に比べて近視を抑える効果が少ないことも、研究で示されています。
つまり、サッカーやランニングのような**屋外(グラウンド)でのスポーツ**は、運動の効果に加えて、太陽光を浴びる時間も確保できる、一石二鳥の活動だと言えます。一方、**体育館でのバスケットボールや卓球などの室内スポーツ**は、体を動かす健康効果はあっても、視力予防という観点では、屋外活動ほどの効果は期待しにくいようです。極端に言えば、外で座って本を読むだけでも、近視予防としては、室内でのスポーツより意味がある可能性がある、ということです。
家庭でできる、シンプルな工夫
「見えにくい?」と聞いても、子どもは「大丈夫」と答えがちです。それよりも、日常の中の様子に目を向けることが、気づきの近道になります。
眼科医によると、次のような様子が見られたら、視力低下のサインかもしれません。
- テレビを、以前より前の方で見るようになった
- 目を細めて、遠くのものを見ている
- 頻繁に目をこする
- 顔を傾けたり、横にして見ようとする
- 物に、極端に近づこうとする
会話で確認するなら、「見える?」という直接的な聞き方より、「黒板の、一番端の文字は読める?」「このくらい離れたら、スマホの文字は見える?」というように、具体的な場面を挙げて聞いてみる方が、答えやすいようです。
もっと小さなお子さんの場合は、言葉で確認するより、一緒に試してみる方法もあります。お気に入りの絵本やおもちゃを、どれくらい離れたところから認識できるか見てみたり、ボール遊びでボールの動きをきちんと追えているか観察したりするだけでも、見え方の手がかりになります。
そして何より、**習い事を選ぶときに、屋外(グラウンド)系のスポーツも選択肢に入れてみること**。これは、見え方の確認と同じくらい、今日からできる、シンプルで効果のある対策だと思います。学校健診で指摘を受けた場合は、「本人が困っていないから大丈夫」と判断せず、できるだけ早めに眼科を受診することをお勧めします。
まとめ
- 子どもの視力・見え方を重要だと考える保護者は89.0%だが、実際に子どもと話している家庭は約6割にとどまる
- 視力低下を指摘されても、約4人に1人が1か月以内に受診できていない
- 「子ども本人が困っていない」ことが、受診を遅らせる大きな理由。子ども自身が見えにくさに気づきにくい構造がある
- スマホ・デジタル端末は、画面との距離が近くなりやすく、視力低下の大きな要因の一つとされている
- 近視は17歳頃まで進行するが、点眼薬や特殊なレンズで進行を遅らせる治療法もある
- 近視予防の鍵は運動そのものより「太陽光(バイオレットライト)を浴びること」で、屋外スポーツの方が室内スポーツより予防効果が期待できる
アセラズ、クサラズ、アキラメズ。
「困っていないから大丈夫」ではなく、「どう見えているか」を時々具体的に聞いてみること。そして、太陽の下で過ごす時間を少し増やしてみること。どちらも、今日から始められる、小さな一歩です。


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